Junon
1949 秋冬 オートクチュール コレクション、「ミリュー デュ スィエクル」ライン、2017 春夏 オートクチュール コレクション
クリスチャン・ディオールの究極の傑作「ジュノン」ドレスは、盛大な祝祭に映えるデザイン。メゾン ルベが刺繍を施したブルーグリーンの花びらが、クジャクの羽を思わせます。この鳥は、ローマ神話で結婚と多産を司る「神々の女王」を象徴しています。ディオールの最もアイコニックなドレスの1つです。
無数のスパンコールで刺繍を施したチュールを全体に使用し、壮大な雰囲気に仕上げています。卓越したクラフツマンシップは、当時の指折りの刺繍職人であった「ルベ」として知られるルネ・ベーグによって実現しました。
「ジュノン」は「ミリュー デュ スィエクル」ラインの一部であり、その対となる作品に「ヴィーナス」があります。グレーのシルクチュール全体にスパンコールで羽根のモチーフを刺繍した、舞踏会のためのドレスです。
真の傑作であるこの2つのデザインは、オートクチュールに「夢の王国」の地位をもたらし、クリスチャン・ディオールはこれをこよなく大切にしていました。
「ジュノン」はそれ以来、メゾンの多くのクリエイティブ ディレクターによって再解釈され続けています。
そして2017年にはマリア・グラツィア・キウリが、自身初のオートクチュール コレクションのために「ニュー ジュノン」として発表しました。この年の春夏コレクションは、新しいクリエイティブ ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリのトリビュートと再解釈のテーマとなりました。メゾンのサンプリングを根底から変え、新たなフォルムやカットに取り入れていったのです。
「ニュー ジュノン」は、パステルトーンで彩られたプリーツ入りチュールのドレスでした。スカートを形作る花びらは、刺繍は省いてあるものの「ジュノン」を直接的に表現し、コレクションのドレスに特徴的な軽やかさと儚さを演出していました。
この意味で、これはマリア・グラツィア・キウリがメゾンのオートクチュールに与えたいと考えていたイメージに合致していました。それは留められた記憶の体現であり、そのコードは現代女性にマッチしていたのです。
© Laziz Hamani ; © Association Willy Maywald/ADAGP ; © Guy Marineau